建築士はバニラエッセンス

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わが国では、建物を建てる際(例外を除いて)には必ず建築士が設計をしなくてはなりません。それは地震や台風などに建物が耐えられるかどうかという「建物の強度」だけでなく、その建物が及ぼす日影などお隣さんへの配慮、街並みへの配慮などさまざまな法律があるからです。

大きなビルや公共の建物になると、火災警報器や避難経路なども規制が細かく定められていて、お客様が安全に安心して生活できるよう、建築基準法をはじめとするたくさんの法律に基づいて設計されています。それを担当するのが「建築士」です。私自身も当社でその設計業務を担当する一級建築士の一人であり、この仕事が大好きです。しかし、この「建築士」について勘違いをされているお客様はいらっしゃいませんか?一級建築士を「先生」とよび、「偉い人」と思っておられませんか?もしそうなら今日からやめてください(笑)。他の一級建築士さんから叱られるかもしれませんが、私の個人的な意見として、少し述べさせていだだきます。私自身は、前述した法律のチェックや構造計算等とともに建物の設計ができます。しかし、実際に金づちをつかって釘1本うまく打てませんし、病気の診断もできませんし、料理もうまく作れません。つまり、建築設計という分野でのみ活躍できる人です。コンセントひとつ付けるのも電気屋さんに依頼しますし、板一枚切るのも大工さんにお願いします。要するに建物を造るためには電気屋さんや水道屋さん、ガラス屋さんや大工さん、その他たくさんの職人さん、専門家の力を借りなければなりません。その中の一つとして建築士という仕事がある、ということです。だから、「先生」でも「偉い人」でもありません。

さらに言えば、建物を設計するときの主役が建築士ではないということです。特に私自身が携わってきた十数年の経験のほとんどが住宅であり、今も実感しているのは、家づくりの主役は「建築士」や「デザイナー」ではなく、「家」でもなく、「お客様」だということです。私たち設計に携わる建築士は、ケーキそのものではなくて、主役であるケーキを引き立たせるために、ほんの少し加えるバニラエッセンスだと思います。お客様の夢のイメージをカタチにすること。知識と経験を生かしたアドバイスという方法で主役にあった「香り」を加えさせていただく。そんなバニラエッセンスのような役割を担うことができれば、いい仕事ができる、と信じて疑わない今日このごろです。